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設計者に必要なソフトウェアの基礎知識―これだけは知っておきたいソフトウェアの知識と考え方

単純に表すと、「古典的な設計方法と必要な知識を基礎から記述したまとめ本」ということになるだろうか。
システム業界に勤めていると体感ではつかめている知識ではあるだろうが、改めて読むことで頭の中が整理される感覚を覚えた。
設計者に必要なソフトウェアの基礎知識―これだけは知っておきたいソフトウェアの知識と考え方 (実際の設計選書)
設計者に必要なソフトウェアの基礎知識―これだけは知っておきたいソフトウェアの知識と考え方 (実際の設計選書)藤田 和彦 実際の設計研究会

日刊工業新聞社 2011-11
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どのあたりが古典的かというと、本書ではハードウェアを引き合いに出してソフトウェア設計を説明しているので、きっちりとしたウォータフォール型開発を扱っているという点だ。

昨今、弊社のようなソフトハウスや小規模開発では、このようにしっかりとした資料を作成して順次開発していくようなことは少なくなってきており、とりあえず作ってみて問題点を洗い出し修正する、スパイラル型の開発が主流となっている。

では、本書に書いてある内容は不要か?というとそうではない。

本書では基礎的なソフトウェア知識を扱っている。
これは開発手法に関係なく、すべての技術者がソフトウェア作成時に意識すべきものである。この知識を身につけた上で開発作業に携わることが、技術者にとって重要であると考える。

本の具体的内容については、基本情報処理技術者試験の内容を設計という観点から説明した形となっている。

コンピュータの基本的構造から、メモリ内のデータやりとり、設計上の正規化の手順、リストやハッシュといったデータ構造、ポーランド記法やら状態遷移図、インターフェース、プログラミング言語の基礎構造など、本当の「基本」となる内容である。

知識的には情報処理試験を受験しその知識を有していることを前提とし、それが具体的な設計でどのように使われるかを学ぶ。
ただし、普段の仕事から情報処理試験の内容に結びつけ勉強をするという解釈もできるため、情報処理技術者試験を最近受けた、または今から受けるという方にお勧めしたい本でもある。

また、最後の章に「設計評価の視点」という項目がある。

これまでの章は基礎知識に徹していたが、この章については設計全体を評価する際の視点を項目として挙げている。
この内容は客観的に自分の設計を確認する際に必要な視点なので、ぜひ頭に入れておいてほしい。

本書に記載されている内容で不満があるとすると、UIデザインに関する部分が少ない点だろうか。

ソフトウェアとは、機能は既存のものだとしても、新しいUIの見せ方によって、新しい価値を生み出せる。Appleの各種ソフトウェアがその代表といえよう。
そのため、設計上でもUIデザインの重みは高まってきている。
しかし、本書ではデザインに関する記述は存在しないため、その点については別の本にて補完する必要があると感じた。

後、この本のターゲットが機械系の技術者としているため、文章の中に時々、機械製造や設計と比較した場合の記述が見受けられる。
それらは一通り説明を終えた後の補足的に記載されているだけなので、その部分について理解できなくても本は読み進めることは可能であるが、機械設計・製造に携わっている場合は、より理解を進める手助けとなるだろう。

また、タイトルが示しているように、本書は知識を得る本であって手順書や指南書ではないため、注意が必要である。

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